2010年08月18日

上田貞次郎の日記から11

ホメオパシーの問題では、いくつか書き加えたいことがあるのですが、もう少し経過を見てからということにさせてください(日本助産師会は、何やら態度を硬化させているもようで・・・)。

書きそびれていましたが、その前の記事「上田貞次郎の日記から10」に関して訂正があります。
『上田貞次郎日記』の1932年末の記事に、以下のものがあることをご紹介したと思います。
最近世界及日本の関税問題
は、日本評論社の現代全集中の一巻、世界恐慌の一部として公表されたが、その後印度の対日ダンピング関税、オッタワの英帝国特恵協定、満州国の関税独立等があったから、これ等の資料を入れて単行本を作る事にした。その為め十一月中は多くの執筆に費した。この単行本は来春早々発行の予定。
早とちりをしていましたが、「最近世界及日本の関税政策(問題)」は、上田自身が、現代経済学全集28『世界恐慌』に書いた論文のタイトルでした。
それに、インドの対日ダンピング関税、オタワの英帝国特恵協定、満州国の関税独立等の情報を加えて作った単行本というのが、『最近商業政策』です。
ただ、以下の順序を見ていただければわかるのですが、猪間が関税問題にふれた『世界経済図表』はその前年に出ているので(上田文庫にも入っている)、上田がこれを読んで参考にしていることは確かだろうと思います。 
1930年5月 上田貞次郎『商業政策』(日本評論社・現代経済学全集17)
1930年11月 猪間驥一『日本経済図表』(日本評論社・現代経済学全集25)
1931年12月 猪間驥一『世界経済図表』(日本評論社・現代経済学全集26)
1932年10月 上田貞次郎「最近世界及日本の関税政策」『世界恐慌』(日本評論社・現代経済学全集28)
1932年12月 上田貞次郎『最近商業政策』(日本評論社)
現代経済学全集は、猪間の別巻2冊で終わりだと思っていましたが、この『世界恐慌』や、増井光蔵の『賠償問題』、蝋山政道の『世界恐慌とブロック経済』等、31巻まで続いているのですね。深刻な不況の時代をよく反映していると思います。
上田貞次郎全集の第5巻『貿易関税問題』には、この『商業政策』、『最近商業政策』が両方とも収められています。たまたま借りてあったので、パラパラめくっていると、「日本の貿易立国への強い意志」を立証するものとして、これに「最近世界及日本の関税政策」を加えた、上田の関税政策3部作があれば十分なような気がしてきました。
つまり、これまで、この時代に書かれた論文・新聞記事等から探ろうとしていた以上のものが、この3部作から読み取れそうなのです。
またこれらの著作では、経済思想史につづいて、日本の資本主義発達史を描いている部分があって、だんだん、猪間の『日本人の海外活動に関する歴史的調査』が、とくに明治期の記述で、上田の書いたものを下敷きにしたのではないかと思えてきました。
そうなると、『日本人の海外活動に関する歴史的調査』は湛山と猪間の合作であるばかりか、上田と3人の合作ということになります。
上田の論文は、人口問題関連のものだけ読んでいればいいと思っていたのですが、こんなものが眠っているとは思いませんでした。この夏は、これらの著作をじっくり読みたいと思っています。

訂正(10/04):
申しわけありません。上田貞次郎の「最近世界及日本の関税政策」と『最近商業政策』の本体部分はまったく同じものでした(従って3部作というのも誤りです)。「序文」が異なるのと、『最近商業政策』には、本文以上の分量の「付録」がついているだけの違いでした。
posted by wada at 00:54 | TrackBack(0) | 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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